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産後クライシスとは|夫婦の孤立を家族の外の力でほどく

赤ちゃんが生まれて、幸せなはずなのに。となりで眠るパートナーに、なぜかイライラが止まらない。そんな自分に戸惑っていませんか。

それは、産後クライシスと呼ばれる状態です。産後クライシスとは、出産をきっかけに夫婦の愛情や関係が急に冷え込んでしまう時期のことを指します。あなたの心が冷たいからでも、愛情がなくなったからでもありません。多くの夫婦が、静かに通り抜けていく道なんです。

この記事でお伝えするのは、産後クライシスがなぜ起きるのか、という背景です。そして、家族の中だけで抱えるとどうして苦しくなるのか。家庭でできる小さな一歩と、家族の外の手を借りるという選択肢も、順番にご紹介します。読み終えたころ、少しだけ肩の力が抜けていたら嬉しいです。

INDEX目次

産後クライシスとは|「愛情が急に冷めた」その正体

産後クライシスとは、出産後に夫婦がお互いへの愛情を急に感じにくくなる時期のことです。特に、妻から夫への気持ちが大きく揺れやすいと言われています。あなただけに起きている特別なことではありません。

ある追跡調査では、その変化がはっきり数字に表れています。

数字にすると、少しほっとしませんか。気持ちが揺れるのは、あなたひとりの問題ではないのです。子どもの成長とともに、妻の愛情実感がどう変わっていったのか。同じ調査の推移を、表にまとめました。

妻が「配偶者を本当に愛していると実感する」割合の推移

子どもの時期妻の愛情実感妊娠期からの変化出典
妊娠期74.3%基準出典:ベネッセ次世代育成研究室
0歳45.5%大きく低下出典:同研究室 追跡調査
1歳36.8%さらに低下出典:同研究室 追跡調査
2歳34.0%最も低い出典:同研究室 追跡調査

グラフのように、産後まもなくからゆるやかに気持ちが揺れていくのが分かります。急に冷めたわけではなく、少しずつ、なんです。

産後クライシスの意味と、いつからいつまで続くのか

産後クライシスに、はっきりとした医学的な定義があるわけではありません。もともとはメディアから広まった言葉で、産後まもなくから始まり、お子さんが2歳前後まで続くことが多いと語られています。

先ほどのベネッセの調査でも、妻の愛情実感がいちばん下がっていたのは、子どもが2歳の時期でした。逆に言えば、その山を越えると少しずつ和らいでいく方も多いということ。

今のつらさが、この先ずっと続くわけではありません。まずは、そこを知ってください。より詳しい調査結果は、ベネッセ教育総合研究所の解説ページ(確認済み)でも読めます。

妻が「配偶者を本当に愛していると実感する」割合の推移
産後、少しずつ気持ちが揺れていく流れ
妊娠期
74.3%
出発点。夫婦で差はほとんどありません
子ども0歳
45.5%
生まれた直後から、大きく低下
子ども1歳
36.8%
さらにゆるやかに低下
子ども2歳
34.0%
最も低い時期。妊娠期から42.3ポイント減
出典:ベネッセ次世代育成研究室「妊娠出産子育て基本調査」(2016年公表)

「私だけがおかしいの?」ではない、というお話

「夫にこんなにイライラするなんて、私はひどい妻なのでは」。そう自分を責めてしまう方は、とても多いです。でも、違います。

産後の体は、出産という大仕事を終えたばかり。眠る間もなく赤ちゃんのお世話が続き、心も体も休まりません。その状態で、いつも通りにやさしくいられる人のほうが、めずらしいくらいなんです。

イライラは、あなたの人間性のせいではありません。それは、あなただけのせいじゃありません。まず、そのことを、そっと自分にかけてあげてください。

なぜ産後、夫婦関係はすれ違うのか|責める前に知りたい背景

産後に夫婦がすれ違う背景には、いくつかの理由が重なります。主なものは、睡眠不足による余裕のなさ、体と心の大きな変化、そして家事育児の偏り。どれか一つではなく、いくつもが同時に押し寄せる時期なんです。

産婦人科医や子育ての専門家がYouTubeで発信している内容でも、この3つは繰り返し語られています。すれ違いに理由があると知るだけで、相手を責める気持ちがふっとやわらぐ。そんな効果もあります。

体と心の変化、そして睡眠不足という土台

産後は、女性の体のなかでホルモンのバランスが大きく変わります。気分が沈みやすくなったり、涙もろくなったり。その背景には、こうした体の変化も大きく関わっているそうです。

そこに、細切れの睡眠が重なります。2〜3時間おきの授乳で、まとまって眠れない日々。睡眠不足が続くと、大人でも些細なことでイライラしてしまうもの。土台がぐらついた状態で、心の余裕を保つのは、とても難しいことなんです。

「発達科学者はる先生の0〜6歳子育てゼミ」など、専門家のチャンネルでも同じ指摘があります。夫婦仲が急に悪くなる原因として、睡眠とホルモンの変化がたびたび挙げられているのです。

「見えない家事・育児」の偏りが生む溝

夫婦の間に溝を生みやすいのが、「見えない家事・育児」の偏りです。見えない家事とは、名前のつかない細かな家の仕事のこと。例えば、おむつの残りを気にかける、離乳食の月齢を調べる、予防接種の予定を管理する、といった一つひとつです。

こうした仕事は、やって当たり前と思われがちで、感謝もされにくい。けれど、頭のなかは常にそのことでいっぱいになります。片方だけがこれを背負うと、「どうして分かってくれないの」という気持ちが静かに積もっていきます。家事の偏りに悩む方は、共働きなのに家事は妻ばかり?分担を見直す方法も、あわせて読んでみてください。

意外と多い「見えない家事・育児」の例
在庫の管理
おむつやミルクの残りを、いつも気にかけている
情報の収集
離乳食の進め方や予防接種の予定を調べておく
連絡帳・準備
保育園の連絡帳を書き、持ち物をそろえる
体調の見守り
子どものちょっとした変化に、いち早く気づく

会話が減り、感謝が言葉にならなくなる時期

赤ちゃん中心の毎日になると、夫婦の会話は自然と減っていきます。話す内容も、連絡事項ばかりになりがち。

そして、いちばんこわいのが、感謝が言葉にならなくなることです。やってもらって当たり前、してあげて当たり前。心のなかでは思っていても、「ありがとう」も「ごめんね」も口に出す余裕がなくなっていく。この小さな積み重ねが、いつのまにか大きな距離になっていきます。

「ホッとできる!産婦人科チャンネル」でも、同じ背景が語られています。出産後にパートナーへの気持ちが揺らぐのは、こうしたすれ違いの積み重ねが一因なのだそうです。

家族の中だけで抱えると、なぜ苦しくなるのか

産後の悩みを家族の中だけで抱えると、逃げ場がなくなって苦しくなりがちです。夫婦二人、あるいは親子だけの閉じた輪の中で頑張るほど、視野が狭くなり、煮詰まってしまいます。それは、あなたが弱いからではありません

人の手が届かない場所に、自分たちを置いてしまっている。ただ、それだけのことなんです。

「頼れる実家が近くにない」という現実

昔なら、少し歩けば実家があって、おばあちゃんが赤ちゃんを抱っこしてくれた。そんな風景が、今は当たり前ではなくなりました。

進学や就職で生まれ育った土地を離れ、都市部で暮らす子育て世帯はめずらしくありません。頼れる実家が近くにない。ちょっと子どもを見てもらう、という当たり前が、手の届かないところにある。これは、あなたの努力不足ではなく、時代と暮らしの変化そのものです。公的な支援も含めて頼り先を整理したい方は、子育てサポート東京の全活用法もご覧ください。

だからこそ、家族の外に、頼れる誰かがいるという選択肢が意味を持ってきます。

共働き世帯で家事育児が一点に集中する構図

共働きのご家庭では、仕事と家事と育児が、限られた時間のなかに一気に押し寄せます。そして、その多くが、どちらか一方に集中してしまう構図が生まれやすい。

帰宅して、冷蔵庫を開ける。疲れた体に「今日は何を作ろう」というため息。子どもの泣き声、たまった洗濯物、明日の準備。全部を一人で回そうとすれば、心がすり減っていくのは当然です。

「家事代行なんて、主婦失格」。そう思う方も、いるでしょう。でも、違います。頼ることは、弱いことじゃない。むしろ、家族みんなが笑顔でいるための、かしこい選択なんです。

産後クライシスを思わせる洗い物が残る夕方の台所

産後クライシスをやわらげる、家庭でできる小さな一歩

産後クライシスをやわらげるのに、大きな解決策は要りません。家庭でできる一歩は、「見えない家事を見える化する」「食卓のハードルを下げる」「一人の時間を確保する」の3つです。どれも、今日から始められます。

完璧を目指さなくて大丈夫。できることから、そっと。

「見えない家事」を二人で書き出してみる

まずおすすめしたいのが、家事と育児を紙に書き出してみることです。おむつの補充、離乳食の準備、保育園の連絡帳。頭のなかにあるものを、全部、外に出してみる。

書き出すと、「こんなにあったんだ」と、二人ともびっくりするはずです。見えなかったものが見えると、責め合いが減ります。「これは私がやるね」「じゃあこっちは僕が」。分担の話し合いは、可視化から始まります。

大切なのは、どちらが多い少ないの勝負にしないこと。横並びで、一緒に解決しましょう。その姿勢が、すれ違った気持ちをもう一度つなぎ直してくれます。

家にある食材で、無理なく食卓をまわす工夫

毎日の献立を考えるのも、大きな負担のひとつです。ここで肩の力を抜くコツは、家にあるもので作る、と決めてしまうこと。

冷蔵庫を開けて、いまある食材でメニューを考える。買い足すことを前提にしないだけで、気持ちがずいぶん楽になります。余った野菜で具だくさんのみそ汁を作る。作り置きを一品だけ用意しておく。それで十分なんです。

限られた食材を上手に活かして、無駄なく一品を仕上げる。これは、人生経験豊かな人ほど得意な、暮らしの知恵でもあります。帰宅したら温かいごはんがある暮らしについては、料理の作り置きサポートでも詳しくご紹介しています。

一人になれる時間を、罪悪感なく確保する

もうひとつ、意識してほしいのが、一人になれる時間です。たった30分でもいい。子どもから離れて、温かいお茶を飲む。ぼんやりする。それだけで、心は少し回復します。

「子どもを預けて自分だけ休むなんて」。そんな罪悪感を、抱かなくて大丈夫です。あなたが笑顔でいることが、家族にとっての何よりの安心なんですから。

まず、あなたが幸せになってください。順番は、それでいいんです。

産後クライシスを家庭でやわらげる3ステップ
1
見えない家事を書き出す
頭のなかの家事育児を、全部紙に出してみる
2
家にある食材でまわす
買い足し前提をやめ、いまあるもので一品を
3
一人の時間を確保する
30分でも、罪悪感なく自分を休ませる

家族の外の「第三者」が間に入ると、心に余白が生まれる

夫婦二人だけ、親子だけでは、どうしても煮詰まってしまう。そんなとき、家族でも友人でもない第三者がそっと間に入ると、張りつめた空気がふっとゆるむことがあります。産後クライシスは、離婚のきっかけになりうると複数の専門家も指摘しています。だからこそ、二人だけで抱え込まないでほしいのです。

「助産師HISAKOの子育てチャンネル」でも、妻から離婚を切り出される前に周りの力を借りることの大切さが語られています。おせっかいという名の深い寄り添いが、そこにはあります。

「東京のおばあちゃん」がいる、という安心感

第二の実家がお届けしたいのは、「東京のおばあちゃん」のような存在です。人生経験豊かなサポーターが、実家のばあちゃんのように、そっとあなたの暮らしに寄り添う。そんな存在でありたいと願っています。

家にある食材でお料理をしたり、お子さんを見守ったり。ときには、あなたの話にただ耳を傾けたり。使う側・使われる側ではなく、横並びの関係で、あなたの家だけのカスタムメイドのサポートを一緒に考えます。

「霧が晴れるようにほっとする」。利用された方が、よくそう話してくださいます。それは、精神安定剤みたいなもの。そんな存在です。

産後クライシスを支える温かい台所の光景

作業を頼むのではなく、心の余白を取り戻す

第二の実家が大切にしているのは、家事という作業を代わりにこなすことだけではありません。あなたの心に、余白を取り戻してもらうことです。

誰かが台所に立ってくれている間、あなたは赤ちゃんとゆっくり過ごせる。少し眠る。それだけで、パートナーにやさしくする余裕が、少しずつ戻ってくる。人と人が出会うことで生まれる、小さな化学反応です。世代を超えて活かし活かされる、その土壌を、私たちは信じています。

一人で抱え込まないで。頼ることは、弱いことじゃありません。

深刻なときは、一人で抱えず専門の窓口へ

ここまで家庭の工夫や第三者の力についてお伝えしてきましたが、ひとつだけ、大切なお願いがあります。

眠れない、涙が止まらない、何をしても心が晴れない。そんな状態が続くときは、我慢せずに専門の窓口を頼ってください。お住まいの自治体の保健センターや、産婦人科、産後ケア事業などが、あなたの力になってくれます。心と体のことは、早めに相談して大丈夫です。

頼る先は、多いほうがいい。あなたを支える手は、いくつあってもいいんですから。

よくある質問

産後クライシスは、いつからいつまで続きますか?

個人差がありますが、産後まもなくから始まり、お子さんが2歳前後まで続くことが多いと言われています。ベネッセ次世代育成研究室の追跡調査でも、妻から夫への愛情実感は子どもが2歳の時期に大きく下がっていました。時期が過ぎれば少しずつ和らぐ方も多いので、今のつらさが一生続くわけではない、とまず知っていただけたらと思います。

夫にイライラしてしまう自分が嫌になります。おかしいのでしょうか?

おかしくありません。睡眠不足や体の変化が重なる産後は、心の余裕が奪われやすい時期です。あなたが冷たいわけでも、愛情がなくなったわけでもありません。まず、あなた自身をいたわってあげてください。一人で抱え込まないで、と伝えたいです。

実家が遠くて頼れません。どうすればいいですか?

頼れる実家が近くにないご家庭は、決してめずらしくありません。そんなときは、家族の外の手を借りるという選択肢もあります。第二の実家では、人生経験豊かなサポーターが、家にある食材でお料理をしたり、お子さんを見守ったりと、実家のばあちゃんのようにそっと寄り添います。頼ることは、弱いことじゃありません。

気持ちの落ち込みがつらいときは、どこに相談すればいいですか?

眠れない、涙が止まらない、何も手につかないといった状態が続くときは、我慢せず専門の窓口を頼ってください。お住まいの自治体の保健センターや、産婦人科、産後ケア事業などが力になってくれます。心と体のことは、早めに相談して大丈夫です。

夫にも、産後クライシスのことを知ってほしいです。どう伝えれば?

責める口調ではなく、「一緒に乗り越えたい」という気持ちで伝えるのがおすすめです。見えない家事を紙に書き出して二人で眺めると、言葉にしにくかった大変さが伝わりやすくなります。横並びで、一緒に解決しましょうという姿勢が、何より届きます。

おわりに

産後に夫婦がすれ違うのは、あなたのせいでも、パートナーだけのせいでもありません。眠れない夜と、慣れない毎日が重なった、その時期ならではのことなんです。

家庭でできる小さな一歩から始めて、それでも苦しいときは、家族の外の手を、どうか遠慮なく借りてください。

あなたの笑顔が、子どもたちの未来を作ります。 まず、あなたが幸せになってください。

少しでも気になることがあれば、いつでもご相談ください。

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